私は新宿エリアを歩くことが昔から多いのですが、大小関わらず英会話スクールが増えたなーと最近改めて思います。その中で気になった専門のスクールがあったので、今日は英語の発音と、アメリカで披露したマクロン仏大統領の英語スピーチとを絡めながら、私たち非ネイティヴ の英語力について考えたいなと思います!
目次
発音に特化した英会話スクール・英語コーチ
規模の小さいスクールや先生は何かしら専門に特化することも多いのですが、最近気になっているのが発音に特化した英会話スクールや、発音矯正コーチと言った方々が増えてきたことです。
ハリウッドを目指す俳優の方や、グローバル市場を視野に入れたミュージシャンの方なら発音も完璧するメリットというのは大いにあるのですが、一般のそこまでまだ英語が使いこなせない方々が、発音を入り口に英会話を始める(あるいは再開する)というのはあるのだろうか、と思ってしまいました。
他者批判ではなく、そういう需要があるのか!と単なる興味です!トゲがあったらごめんなさい。
マクロン仏大統領の話題の英語力とは!?
さて、話題は一旦変わりますが、先日、訪米の際にスピーチをしたフランスのマクロン大統領の英語力が、結構ネット上で話題になっていますね。
フランス語は、日本語に比べると単語や文法の仕組みが英語と近いですが、歴史ある豊かな文化や国民性もあったり、英語に続いて世界の様々な地域で広く話されている言語だということもあり、長い間、フランス語話者には英語が上手な人が数ないと言われてきました。
マクロン仏大統領のスピーチが日本でも話題に
それでもヨーロッパの言語だし、アルファベットだし、移民も多いし、普通に考えて日本人より圧倒的に上手なんですけどね。それでも「フランス人の英語は下手という前提を覆したマクロン仏大統領の英語スピーチ」という角度で、日本で話題になっているということが新鮮でした。
そもそも日本で話題になったきっかけは、トランプ米大統領よりも上手な英語を話す、とアメリカで話題になったからのようです。トランプ大統領の言葉遣いはそれはそれで聞いていて恥ずかしいですが、そもそも英語話せない日本人が、アメリカ人とあたかも同じ立場になったつもりで他人の英語力つつけるのかーなんて思っちゃったりしました。
まぁ日本人のコンプレックスありつつ偉そうな感じを批判するために記事にしようと思ったのでは無いので、ちょっと置いておきましょうか。笑
やっと本題
マクロン仏大統領の今回のスピーチは、非ネイティヴによる英語のスピーチとして、日本人にとって最高のお手本になるのです。
だから、なぜマクロン大統領の英語スピーチが上手なのか解明して、日本人の私たちの英語力向上に活用させてもらいましょう!というのが本日のテーマです。
マクロン仏大統領の英語はなぜ「上手」なのか
マクロン仏大統領の英語スピーチは、私たち日本人が英語を使うときにお手本にしたい要素がぎゅっと詰まっています。全体の構成もわかりやすくまとまっていて素晴らしかったですが、一つずつのポイントも見ていきましょうね。
1. 話すスピードと、間の取り方
まず、全体的にゆっくりと話しています。ゆっくりというのは全体を流さず、言葉と言葉の間に適切な間を取っているため聞きやすいということを意味しています。
一つ一つの単語や、セットで意味をなす表現(今回は”in front of us“など)をまとめて言うことが重要な理由は、英語は単語ではなく、言葉のまとまりで意味を伝える言語だからです。
例)
- “… weakens us“ 目的語usがあってこそ意味が伝わるため、ここは繋げると効果的。
- “…temporary remedy...” 形容詞+名詞で一つの言葉にするときは、絶対に一息で言わないと、聞いている側は混乱しがち。特に冠詞が苦手な日本人は、こういった間の取り方でカバーするのが大事。
- “… fears of our citizens.“ 日本語で「〜の…」と言う繋ぎの意味で使う”of”は、前後の名詞全て一気に言うと意味のまとまりがわかりやすい。
マクロン仏大統領のスピーチは、意味のまとまりを一気に言い、その前後に間を置いているため、とても意味が伝わりやすいスピーチになっています。
2. 言葉の選び方
フランス語と英語だと、実際にどんな文脈でどんな言葉を使うかというところが似ているのは確かですが、それでもしっかりと、英語話者が使うであろう言葉を選んでいるということが、わかりやすさに繋がっていると感じました。
例えば、
“withdrawal”
一般的な意味だと「引くこと、引き出すこと(-alがついているので名詞です)」で、どんなときに使うかと言うと、「銀行口座からお金を引き出す」から「身を引く、辞退する」まで広い意味を持つ単語です。
今回は、国際社会の相互協力体制から身を引く動きについて言っています。イギリスのEU離脱やアメリカのアメリカファースト的な方向性が目立つ昨今、英語の文脈ではよく使われるようになった、もともとは一般的な単語です。
日本語ではなかなか端的に一言で訳せる名詞が無いようなこういった言葉は、日本語でスピーチ原稿を作って英訳すると、なかなかたどり着きづらいキーワードです。
ハマるキーワードが見つからなければ、文で同じ意味を説明することになりますが、インパクトと印象が命のスピーチでは、簡潔に的を得たキーワード選びというのはとても大事です。
その技術がマクロン仏大統領のスピーチはピカイチだったと思いました。
3. 抑揚の付け方
そしてもちろん、スピーチの基本でもありますが、全体的な緩急や抑揚の付け方も、聞きやすさに大きく関わってきます。
考えなければさらっと言ってしまうようなシンプルな文でも、それを大事に言うことで、聴衆に大きな印象を与えることができます。今回はいくつかある大事な場面の中でも、この文に重きが置かれていたと思います。
例)”It is a critical moment.”
その前後は、少し難しめな言葉を使い、長めの文で伝えたいことの説明を比較的速くしているのですが、間にあるこの一文を、ゆっくりためて言うことで、聴衆ははっとされられます。「今、大変なときなんだ」と意識させられます。
シンプルで大事な一文がゆっくり言われるスピーチは、人の印象に残ります。
自分の母国語以外で、しかもスピーチという形で自分の熱い思いを発信するのは簡単なことではありません。
正しい周りのサポートと、そのアドバイスに忠実に従って立派なスピーチを披露した、マクロン仏大統領の真摯な姿勢が伝わる、とても好印象なスピーチでした。
フランス語アクセント(なまり)を意識させないスピーチ力
なぜ私が今回英語ネイティヴではないフランス大統領のスピーチに感動したかというと、マクロン仏大統領の英語には、しっかりとフランス語アクセント(なまり)が残っていたからでした。
なまりが残っているならそんなに上手じゃないんじゃないか、と思う人もいるかもしれません。
でも、フランス語なまりが気にならないくらいのスピーチ力だったところが真の凄さだと私は思っています。
world, fear, convinced, severely, influence, empty…性格悪くあえて挙げていくとフランス語発音の癖が強い単語も多いです。でも、全然伝わるんです。
そして、それで全然いいんです。伝わるんですから。
やっぱり、言葉によるコミュニケーションには、言葉一つ一つの発音ではなくどう話すかの方がよっぽど重要だなと再確認させられました。
長年続く発音vs言語力論争
今でもいろんな音声学の学者とかネイティヴ至上主義をまだまだビジネスモデルとして売っていきたい人たちは、発音の重要性をとっても強調します。
でも、伝え合うために学ぶ言葉なのに、伝わっててもなお「発音がなっていないから二流である」とする風潮はなんだか時代錯誤だな〜と思います。
そもそも、それではどの地域の発音を完璧にすれば「一流として英語話者として認められるのか」定まっていません。日本で綺麗とされている北米西海岸の発音だって、イギリス人からしたら「アメリカなまりだね〜」ってなりますし、そもそもイギリスにだっていろんな地域のアクセントがあります。
世界のどこに行ってもみんなをハッピーにさせられる発音なんてないんです。
カナダのバンクーバーに至っては、みんな大人になってから移民してきた人だらけだったりするので、語学学校の先生もなまってます。みんななまりあいながら、その場その場で聞き返したり、お互いのなまりに慣れていって、抵抗なく理解し合えるようになっている、そんな英語圏も存在します。
非ネイティヴとして英語を使う人の方が多い今の時代ですから、発音を気にしてコミュニケーションが取れなかったり、成長スピードが落ちるなんていうもったい無い方向に走る人たちが減って欲しいと強く思います。
正直、日本人は発音にこだわりすぎです!そんなの今もう誰も求めていないです。それより、日本語なまりを残したまま、伝わりやすい話し方を練習しましょ!
ちなみに、冒頭でも触れた、「ハリウッドで仕事を取りたい俳優」でしたり、「ネイティヴ市場のピリピリした世界で対等に渡り歩きたい」というような、「ネイティヴ発音じゃ無いと、やりたいことがどうしても実現できない人」は、徹底的に発音練習した方がいいと思います。
発音一発で落とされる偏った世界が存在することも確かですので。
コミュニケーションができるようになりたい人は、発音矯正は話せるようになってから取り組みましょ^^
では!