英語をちゃんと勉強してきた人たちは、英文法をしっかりマスターしている方が多いです。これは素晴らしいこと!彼らはすでに中・上級者という位置づけにいます。しかし、そう言ったハイレベルの学習者が陥りがちなのが、英文法ドリルから抜け出せないことです。
今回は中・上級者向けに、英文法の知識を使えるスキルに変換する練習へとシフトしていただくきっかけになれば良いなと思います!
Black MirrorというNetlixオリジナルのオムニバスドラマはご存知ですか?詳しくは後ほど記事の最後に書きますね。とにかく素晴らしい作品なのでおすすめです!(雑)
Black Mirrorの特集記事も書こうかな~とも思っていますが、今日はその1話のあるシーンで、仮定法が連続して出てきたので、リスニング練習として紹介したくなりました!
ネタばれもある気がするので、シリーズを楽しみたい方は、このエピソードだけでも観てから読み進めてください!シーズン2の一話目「Be Right Back(邦題:ずっと側にいて)」という作品です。全く続き物ではないので、この話だけ観ても十分楽しめます。
英語学習のために読んでくださっている方はこのままどうぞ^^
目次
Be Right Back (ずっと側にいて) のあらすじ
ストーリーの文脈がないとリスニング力を試すのに現実的ではないので、ざっくりと説明しますね。
主人公の女性Marthaが恋人のAshを突然の事故で亡くし、その悲しみからAshにうりふたつのアンドロイドを注文するサービスを利用し、アンドロイドAshと暮らすという話です。
アンドロイドAshは、Ashが生きていたころのSNS上の情報などをもとにAI技術を用いて、Ashらしい受け答えや行動をするようになります。
でも、どんなにAshに似ていても、やっぱり違和感を拭えず、どうしたらいいか分からなくなったMarthaはアンドロイドAshを崖に連れてきて、飛び降りるようにお願いする、というシーンです。
ここでMarthaの頭の中は「本当のAshだったら。」という想いでいっぱいです。
始めは目的を知らされずに崖に連れて来られたものだから、アンドロイドAshはMarthaが飛び降りるのを阻止するフリをしてふざけています。
その態度を見て、Marthaが抑えきれずに想いを吐き出します。
リスニングチャレンジ!
さて、英語上級者と自負するみなさん。聞いて、意味が理解できますか?
数か所で仮定法が使われていますし、結構早口なので、集中して聞いてくださいね!
ちょうどそのシーンがYoutubeにのっていたので!
それでは答え合わせです。
シーンの英文スクリプト
シーンの英文スクリプト▼
Android Ash (A): NO! DON’T DO IT! Seriously, don’t do it.
Martha (M) : I’m not going to.
A: OK.
M: See, he would have worked out what was going on. (①)
This wouldn’t have ever happened, but if it had, he would have worked it out. (②)
A: Sorry, hang on.
That’s a very difficult sentence to process.
M: Jump.
A: What? Over there? I never expressed suicidal thoughts, or self-harm.
M: Yeah, well, you aren’t you, are you?
A: That’s another difficult one, to be honest with you.
M: You’re just a few ripples of you.
There’s no history to you.
You’re just a performance of stuff that he performed without thinking, and it’s not enough.
A: Come on.
I aim to please.
M: Aim to jump.
Just do it.
A: OK.
If you’re absolutely sure.
M: See, Ash would’ve been scared.(③)
He wouldn’t have just leapt off, he would have been crying, he would have been…(④)
(以後省略)
セリフの意味解説
① See, he would have worked out what was going on.
ほらね。彼だったら*何が問題なのか、もう分かってるはずなの。
*Marthaが飛び降りに来たのではなく、アンドロイドAshに居なくなって欲しい=飛び降りて欲しいと思っているということ。アンドロイドAshではMarthaは幸せではないということ。
② This wouldn’t have ever happened, but if it had, he would have worked it out.
そもそもこんなことにはなっていないはずだけど、もしなっていたとしても、Ashだったらすぐに分かったはずなの。
*本当のAshだったらこんな状況にはそもそもなっていないけど、という前置きを足したうえで、①と同じ内容をほとんど繰り返している。
③ See, Ash would’ve been scared.
ほらね、Ashだったら恐がっていたはずなの。
④ He wouldn’t have just leapt off, he would have been crying, he would have been…
Ashだったらそのまま飛び降りたりなんてしない、彼だったら泣いていたはずだし、彼だったら…
お気づきでしょうか?たくさん出てきた仮定法は全部、would/wouldn’t have done~の形の、第三の仮定法(third conditional)、あるいは仮定法過去完了とも呼ばれる文法が使われています。
そして、全ての文にはに共通して欠けている部分があります。
それは、冒頭で実はヒントとしてお伝えした
「本当のAshだったら…」
というMarthaの気持ちです。
仮定法の文だったら、If節があるはずですよね?
実は上記のすべての文に、
If it had been Ash,
が省略されています。
なぜ仮定法過去完了なのか
さて、今まだ目の前にいるアンドロイドAshに向かって言う言葉で、なぜ第二の仮定法(second conditional)、仮定法過去ではなく仮定法過去完了が使われているのか疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
微妙なところではありますが、まず1つの説明としては、アンドロイドAshの発した言葉(ちょっと前の過去)に対してMarthaは言葉を選んでいるので、「本当のAshだったら、こんなことは言わなかったはずなのに。」という過去の事実に対する逆のことを望む反応をしているんですね。
もう2つ目の説明は、Marthaの気持ちとしては、アンドロイドAshと同居し始めてからちょっとずつ蓄積していっていた違和感が思い起こされて言葉としてあふれ出ているシーンでもあるというところにあります。なので、過去の記憶に対して「あの時も本当のAshだったら、違っていたのに。」という気持ちで発している言葉でもあるから、過去の内容を言う仮定法過去完了が使われています。
文法を極めたみなさんは、文字にして書かれたら急に分かりやすくなりましたよね?でも実際に会話で聞いたらちょっと理解に時間がかかったり、こんがらがったりすることもあるかと思います!
せっかくマスターした文法ですから、リスニングでもスピーキングでも練習して、実際の会話で使えるスキルにまで持っていきたいですね!
Netflixオリジナルシリーズ:Black Mirror (ブラック・ミラー)について
NetflixのオリジナルシリーズBlack Mirrorは、各エピソード全く違うストーリーとキャラクターによって作られます。
ただ、共通しているのは、テクノロジーの進化に翻弄される人間性を描いているところです。
そして、とってもダークなストーリーであることが多いです。エンディングも…予想できないです。ホラー的な怖さというより、人間の怖さがとてもリアルな形で描かれているので、本当に近い未来にこういうことが起きてしまうんじゃないかという気にさせられます。
展開が読めないのが魅力でもあるので、Netflixを契約している方は、前情報なくとりあえず観てみてください!暗い気持ちになるので少し覚悟していただきたいですが、それでも人類の向かっている方向性を考えさせられる「観るべき」作品だと個人的には感じています。映像はどれもとても美しく撮られています。
まとめ
文法を使えるスキルに変換するにはリスニングとスピーキングの練習が不可欠です!生きた例文の宝庫である海外テレビシリーズは、お気に入りを見つけて習慣にしてしまえば、ぐんと力がつきますよー!
では!
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