「Dunkirk (ダンケルク)」

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今日は今も上映中のこの映画…「Dunkirk」です!

Dunkirk (ダンケルク)

イギリス、オランダ、フランス、アメリカの4か国の合作として製作されたこの映画は、第二次世界大戦中フランス・ダンケルクでの負け戦から自国民を避難させるイギリス軍を主に描いた戦争映画です。

戦争映画に初めて挑んだクリストファー・ノーラン監督ですが、見事に今までにない戦争映画に仕上がったと思います。それもそのはず、監督本人は、戦争映画というジャンルに挑んだにも関わらず、これはスリラー/サスペンス映画だと述べているそうです。その理由は下で詳しくご紹介します!

クリストファー・ノーラン監督の得意技である複数の時間軸を行き来するストーリー展開や、戦場であることを忘れるくらい美しい景色はさすが、と思ってしまいました。

普通の戦争映画じゃない点①映像美

血がほとんど出てこない

ビーチを舞台にした戦争映画としてよく比較される作品「Saving Private Ryan (プライベートライアン)」の冒頭から十数分続く、オマハビーチでの戦闘シーンは、血どころか内臓も身体の部位も飛び散り放題でした。

実際の戦場はこうだったのかなと思うと、観たくなかったけど知ることができて良かったとは思いますが、私はもう二度と観れないと思います。

一方でDunkirkは、身を隠すものが何もないビーチでの空からの攻撃に対する恐怖感の方が印象的でした。攻撃前は決まって奇妙に静かで怖かったですし、取り残された兵士達がいかに怯えながら避難の船を待っていたか、一緒に体感することはできました。

それを除いては、美しい映像にスクリーンに目が釘付けでした。もちろん多くの兵士が傷ついたり溺れたり倒れていきましたが、内臓を見ることは一度もなく、作品を通して血もほとんど出てきませんでした。

こんなに綺麗な戦争映画は初めて観ました。

普通の戦争映画じゃない点②セリフ

セリフが非常に少ない

台詞の量が非常に少ないということも、映画の緊迫感と、映像の印象付けに貢献しています。そして、全体量が少ないからこそ、ここぞというときに使われる台詞はとても重みがあります。

印象に残るシーン&セリフ

ここはネタばれ注意です!

ようやくMr.ドーソンの船がダンケルクの海岸に着き、避難を待っていた多くの兵士が小さな船に乗り込んできているシーンです。

その前に救出した戦闘ショック状態の兵士(キリアン・マーフィー)が暴れた際に間違えて突き倒してしまった青年が、重体で船室の床に横になっているところです。

Peter: Be careful down there.

(ピーター:(下の階の人に向かって)そっちの方は(足元)気を付けてくれよな。)

Alex: He’s dead, mate.

(アレックス:あのさ、彼死んでるよ。)

Peter: So be bloody careful with him.

(ピーター:だったら、なおさらマジで気を付けろよ。)

このとき初めてピーターは、重体だった友人の死を、ハリー・スタイルズ(One Direction)演じる兵士Alexから知らされるんです。

救出したショック状態の兵士がパニックになって暴れたことが原因で亡くなった友人の死に対して、色んな気持ちを飲み込んで、気丈に兵士の救助とお父さんのサポートにあたるピーターの、この一言の重さは映画を観た人でないと感じられないかもしれません。

このMr.ドーソン親子の小型船が中心の海のシーンは、他の空とビーチのシーンと比べても、一番人間として感情を揺さぶられるシーンでした。

  • 戦時中とはいえ、戦闘で亡くなったわけではないこの青年の死
  • 戦争のトラウマによって自分をコントロールできなくなっている兵士によって、不本意に引き起こされた事故
  • 船の方向を決めたり敵機に注意したり安定しない兵士のお世話をしたりと他のことを優先せざるを得ず、友人の看病も十分にできず最期の瞬間も立ち会えなかったピーター

色んなもどかしさが、さきほどのピーターの短いセリフに詰まっているなと思いました。

イギリス英語おきまりの”bloody”の意味

このピーターの台詞にある”bloody“という表現ですが、イギリス英語特有の強調表現です。

アメリカ人の台詞であえて他の言葉で置き換えるなら”fucking”かなと思います。そうです。汚い表現です。

特に意味はないのですが、こういった強調表現はニュアンスを理解するために、おさえておきたいポイントを知っておくと、イメージが湧きやすくなります。bloodyに関して言うと、

  1. イギリス英語を使う人である
  2. 感情が高まっている
  3. 乱暴で汚い表現を普段から使うタイプの人である or 普段使わないタイプの人なら、相当気が立っている(怒っている)

ということが推測できます。

普通の戦争映画じゃない点③リアルなストーリー

ヒーローもラブストーリーも無し

戦争映画には、ヒーローやヒロインがいたり、ラブストーリーの要素が含まれているのがお決まりのパターンなのですが、ダンケルクにはそういったストーリーは一切出てきません。

たとえば、一番ヒーローに近い、トム・ハーディ演じるパイロットも、彼の空での活躍の象徴とも言える小型飛行機(スピットファイアというそうです!)を燃やし、ドイツ軍の捕虜になるという展開で幕を下ろします。

一方で、無事にダンケルクの海岸から避難し、列車で帰路についた兵士たちは、彼らの無事の帰還を待っていた祖国の人々に英雄のように迎えられます。

その時のシーンがこちら。

印象に残るシーン&セリフ

Blind Man: Well done lads. Well done.

(目の見えない男性:おまえら、よくやった。頑張ったな。)

Alex: All we did was survive.

(アレックス:俺たち、ただ生き残っただけだよ。)

Blind Man: That’s enough.

(目の見えない男性:それで十分。)

  • lads:イギリス英語のスラングで、年齢に限らず”若者”と言いたいときに使われる。アメリカ英語の”guys”のようなイメージ。

必死に避難してきただけでも大変な思いをしたとはいえ、兵士として、負け戦から帰還することに負い目を感じていたAlex。そんな彼に帰還先の駅で毛布を配っていた盲目の男性の言葉でした。シンプルな言葉がとても沁みました。

戦争中独特の、誰もがある意味ヒーローであり、誰もがある意味では犠牲者であるということを、あえて特出するキャラクターを作らないことで、伝えようとしたのかなと思いました。

個性の描写は最小限

また、登場人物の性格や特徴も最小限に留めて描写されていたのが印象的でした。戦時中、人々がその人らしさを失い、個性が抑圧されてざるを得ない様子は、むしろ戦争という異常事態をリアルに伝えているのではないか思いました。

「その人らしさを失う」という英語表現

戦争がその人らしさを奪うということをはっきりと伝えているシーンがあります。海のシーンでショック状態の中、民間の船に救助されるキリアン・マーフィー演じる兵士の怯えた様子を見て、その小型船を操縦するMr. ドーソン(マーク・ライランス)が言うセリフです。

He’s shell-shocked, George. He’s not himself. He might never be himself again.

(彼は、戦闘ショック状態だよ、ジョージ。いつもの彼じゃないんだ。もしかしたら二度と元の彼に戻ることはないのかもしれない。)

  • Shell-shock 戦闘ショック反応
  • be myself/himself/herself (=be one’s usual self) いつもの自分を保つこと、平常心を保つこと

これは、日常会話でも結構使う表現で、海外ドラマでも良くでてきます。

例)I’m sorry about yesterday. I wasn’t myself because of everything happening to me all at once.

昨日は取り乱してごめんね。一度に色んなことが起こっていっぱいいっぱいになっちゃった。

こんなニュアンスです。これを言えば、冷静に対処できなかったことを許してもらえることがあるので、覚えていて損はない表現だと思います!

まとめ

  • 血がほとんど出てこない、映像美が印象的な戦争映画
  • 台詞数が少ないけど、短くて大事なセリフがある
  • イギリスのswear word的ポジションbloody
  • ヒーローもラブストーリもない、キャラクター描写が抑えられた作品

一言で感想を言うのがとても難しく、一緒に観に行った友人とも、帰り道あまり話せませんでしたが、確実に言えるのは、劇場で観て良かった、ということです。

まだ上映していると思うので、気になる方は是非上映が終わってしまう前に、劇場の臨場感の中観てくださいね。

クリストファー・ノーラン監督の作品も、彼の作品の常連キャストも好きだな~

ほとんど目しか登場しなかったけど、切ない表情が素敵なトム・ハーディとかトム・ハーディとかトム・ハーディとか…笑

おまけ:

「Saving Private Ryan(プライベートライアン)」との比較

ビーチの戦闘シーンで始まるので、各国の映画評論ユーチューバーたちからは、「Saving Private Ryan (プライベートライアン)」冒頭のオマハビーチのシーンと比較されているようです。でも、実際には180度違うので安心してください!

当サイトでも常にトップクラスの人気を誇る「プライベートライアン」の記事はこちら▼

「Saving Private Ryan (プライベートライアン)」は、精鋭兵士たちが活躍する、いわゆる”ヒーローが居る”典型的な戦争映画ですが、この「Dunkirk (ダンケルク)」は、今まで観たものとは全く違う新しい戦争映画だと思うので、戦争映画が苦手な人も観てみる価値はあると思います。