以前に書いた、「バイリンガルの頭の中」という記事が、予想以上にバイリンガルの友人をはじめ好評だったのが印象的でした!やっぱりバイリンガル(あるいはトリリンガルやそれ以上の多言語話者)の頭の中というのは面白いことが繰り広げられていて、バイリンガルになろうと英語に励んでいる人たちも、興味の沸くトピックなんだということなんですね。
そして少し前にたまたま見つけた記事は、実は3年ほど前に公開されたものでしたが、バイリンガルの頭の中の世界に触れた、面白い研究結果をまとめたものだったので、紹介したいと思います。
(英語の原文はこちら:https://newrepublic.com/article/117485/multilinguals-have-multiple-personalities)
というのも、日本人らしさを完全に保ちながら英語を流暢に話せるようになるのは、正直難しいと思うからです。英語を頑張っている人が、日本語の文脈の中の「自分らしさ」にとらわれすぎずに、英語圏の文化や会話のパターンから新たな自分を見つけて、英語が話しやすくなってもらえたら英語を教える身としては嬉しいなと思います。
今回は、この記事の内容と、日本語寄りの日英バイリンガルの感覚を、私の身近な人たちの意見も交えながら解説したいと思います!
目次
1. 1964年Susan Ervin (スーザン・アーヴィン)英語×フランス語バイリンガル
人々が直接言葉などで表現できないような潜在的な意識を探るための方法である投影法の一種である、絵画統覚検査(Thematic Apperception Test)という方法を用いて、1964年にカリフォルニア大学バークレー校の社会言語学者スーザン・アーヴィンによってある実験が実施されました。
その実験では、同じ英仏バイリンガルの被験者に、いくつものイラストを見せ、そのイラストから連想するストーリーを話してもらうという手順でしたが、それを各被験者2ラウンドずつ受けてもらい、一回は英語、もう一回はフランス語によって実験の進行が行われるというのがその二つの違いでした。
二つの違った言語環境で実施された個々の調査結果を見ると、それぞれのストーリーの内容には違った傾向が認められました。英語で行われた調査の多くは女性の成功する話、身体的な攻撃性、そして両親への口語的な攻撃や、非難から逃れようとする、というような内容が多いのに対し、フランス語で行われた調査では、年配者による支配、罪悪感、同期・同僚への口語的な攻撃が含まれる傾向にある、という結果が出ました。
1. 1968年Susan Ervin “Ervin-Tripp”(“アーヴィン・トリップ”)英語×日本語バイリンガル
その後、1968年にアーヴィンは、更に彼女の「使う言語によってバイリンガルの話す内容は変わる」という仮説をより裏付けるべく、サンフランシスコ在住で、アメリカ人と結婚をした日本人女性に対して調査をしました。
今回は、途中まで作られたいくつかの文を英語と日本語それぞれの言語で見せて、被験者にその文の続きを作ってもらうという実験で、ここでも彼女の予想通り、英語と日本語で得られた答えは全然違う傾向にあることが分かりました。
3. 1998年 Michele Koven (ミシェル・コ―ヴェン) ポルトガル語×フランス語バイリンガル
その後も別のイリノイ大学の研究者であるミシェル・コ―ヴェンが実施した調査でも、ポルトガル語とフランス語のバイリンガルが、それぞれの言語を使うときに話の内容が違うという結果が出ました。
この調査では、個人的な人生の体験談を話すときに、使う言語によって内容が変わってくるということが確認されました。例えば、フランス語で話されている内容に出てくる女性はより自立していて主張できる一方で、ポルトガル語のストーリーに出てくる女性は他者の要求に屈する傾向にあったそうです。そして彼女たちが自分自身で説明するペルソナ*も、それぞれの実験で使った言語によって違ったというところも注目すべきポイントだそうです。
*ペルソナ:心理学者ユングの提唱した概念で、人々が社会活動において主に適応する目的で持つようになる「仮面」のこと
結論:事実として確かに存在するバイリンガルな多重人格者
いまだにこの「使う言語によって話す内容に違いが生まれる」という現象が、特定の言語との間に起こるのか、または文脈に依存するのかなど、解明されていなところはたくさんあるそうですが、昔から、複数の言語を話す人はそれぞれの言語を使うときに違った人格を持ち合わせているということが示されてきたことがわかります。結論と言ってしまっていいのかは微妙ですが、そういう人たちが多く存在するのは事実です。
日本人の日英バイリンガルに現れる傾向
日本でも海外でも日本人の日英バイリンガルには何人も出会ってきましたが、上記のような調査はしていないものの、話す言語によって同じ人でも性格が変わるというのは多く見てきました。
人によって日本語の時と英語の時でどう変わるかというのは、少しずつ違うにしても、日本人日英バイリンガルが英語を話すときに、共通した傾向はあると思います。
日本人の日英バイリンガルが英語を話すときの人格の変化の傾向
- おおらか/おおざっぱになる
- 口数が増える
- 身振り手振りやリアクションが大きくなる
- 柔らかく・カジュアルになる
- ポジティブになる
- 自分の意見を言うようになる
- 人と違うことが気にならなくなる
- 反論も言うようになる
かなりざっくりとした特徴なので、そんなに外れていない気がします。みんながみんなこうなるわけではありませんが、日英堪能な日本人が日本語で話した場合に比べて、英語に切り替えた時のほうが上のような性格になる傾向があると思います。いくつかは以前の記事でも書いたことがある内容ですね!(過去の記事:「英語でポジティブ♪」)
まとめ
- 昔から、バイリンガルの多重人格性については研究がされてきました!
- バイリンガルの多重人格は、実験&調査では結果として示されています!
- まだまだ様々な条件で調べる必要があるとは思いますが、確かにバイリンガルは使う言語によって性格が変わる傾向にあるようです!
使う言語が違えば、性格が変わるのは自然、ということがもっと認知されたらいいなと思って普段とはちょっと違う内容の記事を書いてみました!なぜなら、冒頭でも触れた通り、完全に日本人らしく振る舞いながら英語ぺらぺらになるのは、結構難しいと思うからです。
英語を使うときは、英語圏の文化や会話のパターンから、性格を切り替えた方が、物事がスムーズに運びますし、自分の英語も通じやすくなります。これはまた別の記事で詳しく解説しますが、使う言語によって性格を変えるのも、英会話上達の一つのテクニック、と少し考えてみてください!新しい自分を、新しい言語と一緒に発見するのも楽しいですよ!
では!
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